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「IT」をアジャイルな思考の下に

SRIの研究者の技術に関する深い知識とITのマネジメント能力、受賞歴のあるSRIのプログラムの多くに生かされる

「私は30年以上ソフトウェアエンジニアとして働いていますが、今でもソフトウェアを構築するのが大好きです」

SRIインターナショナルには、世界中から集まった優秀な人材が数多く所属しています。その優秀な人材の一人が、Center for Software Engineering, Integrated Systems and Solutions(ソフトウェア工学、統合システムおよびソリューションセンター)のプリンシパル・ソリューション・アーキテクト(主任ソリューション設計者)であるKen Wingerdenです。Wingerdenの技術に関する深い知識とITマネジメントスキルは、長年にわたり数々の賞を受賞してきたSRIのプログラムの多くに寄与しています。今回のブログでは、アジャイルなITマインドを備えた、SRIのテクノロジー界のスーパースターに関するストーリーと関連するプログラムなどをご紹介します。

軍事関連技術から民間産業へ、そして再び軍事関連へ

Wingerdenは、カリフォルニア州のサンタクララ大学でコンピュータサイエンスと数学の学位を取得して新卒でTRW社に入社し、米国陸軍のGuardRail共通センサープログラム(GuardRail Common Sensor program)の開発チームの一員としててソフトウェアのエンジニアリングを担当していました。Wingerdenは自分のキャリアの初期の頃について、バグテストをしたり、戦術監視の模擬ミッションに参加したりしていたと懐かしく振り返っています。この頃の彼のキャリアは軍事規格に関わるものでしたが、政府関連の仕事から民間産業へ転身できるような汎用スキルを身につけていたのです。

その後、Quantum Inc.やTransUnionでエンジニアリングの担当者を歴任するなど、民間企業で多くの課題に挑戦してきました。TransUnionでは信用調査システムの革新的な開発に携わり、自らのスキルを大規模コンシューマーシステムでいかんなく発揮しました。このシステムは現在も数百万人の顧客が毎月利用しています。消費者の要求に応えるにあたり、必要とされるダイナミクスとスケーラビリティを理解することで、あらゆる規模のITプロジェクトに対応できるスキルを磨いたのです。

また、彼がキャリアを積んでいた頃と同時期には、クラウドコンピューティングが出現して進化を遂げてきました。これまで大規模コンシューマーシステムに関わってきたことから、クラウドインフラの自動プロビジョニングと、主要ソフトウェアサービスプロバイダーとの統合を基礎とする、DevOpsという新しい分野に興味を惹かれました。この分野では、安価で拡張性があり、信頼性の高いカスタマイズ可能なソリューションを提供できなければなりません。

2010年頃に、友人から次のチャレンジのためにSRIインターナショナルを検討することを勧められました。そして、Wingerdenがキャリアの初期に身に着けた軍事関連テクノロジーは、SRIでその集大成を迎えたのです。

SRIという結束力の強いアンブレラ(傘)

WingerdenはSRIへ入社後、Center for Software Engineeringでシニアソフトウェアエンジニアとしてキャリアをスタートしました。彼自身は、ソフトウェア開発で成功をおさめる事ができた背景にはいくつか重要なポイントがあるとしており、「この分野の仕事では、物事が常に変化しています。だからこそ、優秀なソフトウェアエンジニアは、学ぶことが好きで、変化を好み、変化と適応を求められる環境下でこそ本領発揮するという特性を持っており、私自身もこのような特性が十分備わっていると思っています」と述べています。

SRIでの彼の責務は、研究所のニーズの進化に伴って毎年変化しています。SRIのCenter for Software Engineeringの主な目的は当初、研究所全体にソフトウェア工学の専門知識を提供することでしたが、それも時代とともに変化しています。現在ではソフトウェア工学の専門知識を提供するだけでなく、より幅広い要件が必要とされるようになりました。主任ソリューションアーキテクトとして、Wingerdenはプロジェクトのライフサイクル全体に存在するあらゆる複雑性を把握しなければなりません。また、SRIという基盤の中で、費用対効果、規制遵守、情報セキュリティに関する要件など、顧客ニーズのマトリックスを充足できるようなエンジニアリングソリューションを提供する実践的な経験も必要とされています。

Wingerdenは、SRIは全ての分野をまとめる「結束力の強い傘」として、エコシステムのような機能を備えるべきであると考えており、次のように述べています。

「SRIでは、私たちが備える技術を最大限に活用できる方法について、各ユニットのそれぞれが互いに学び合うことを重視しています。つまり、マーケティングの要素があればマーケティングの担当者を、法務の要素があれば法務担当者を、契約などの要素があれば契約担当者を、というようにです。しかし、残念ながら、多くのプロジェクトはそれぞれの担当者に任されたままになっており、フラストレーションがたまってサイロのように孤立化しています。効果を最適化するためには、コラボレーションが必要なのです」

協力的で結束力の強い傘の構築が、SRIにおけるWingerdenに課せられた使命です。だからこそ、Wingerdenは定期的に部門を超えてコミュニケーションを図るようにしています。その際に、SRIの複数プロジェクトにまたがる課題に対して、共通の解決策を見出すこともあるそうです。

ソフトウェア開発の楽しさ

「プロフェッショナルとしての大きなやりがいは、お客さまが大喜びするようなソリューションを提供できたときに感じられるものなのです。」

Wingerdenは軍事関連から民間ベンチャーまで、さまざまな業界で働いてきた豊富な経験を有しています。自らのキャリアの進展とともに、ソフトウェア開発のライフサイクル(SDLC: Software Development Life Cycle )全般では、アジャイル開発と最適化の原則がますます重要になってきました。彼はこのアジャイル思考の経験をSRIに導入しました。そして、彼はシステム思考の持ち主で、顧客の要求から外側に向けて作業を進め、顧客のニーズに合わせてシステムを構築していきます。

「私は顧客の問題を理解するために、顧客と話をすることが大好きです。顧客の問題を理解することが好きなのです。私は要件を引き出すときに使える一連のテクニックを編み出しました。そして、顧客の求めるものを正確に作るために、さらなる要件を引き出せるようなプロセスを開発しました。ソフトウェア開発のライフサイクルを最適化するアジャイルなソフトウェア開発プロセスは、この業界が長い時間をかけて受け入れてきたものです。私は、このアジャイルの原則をSRIに導入しています。」とWingerdenは述べています。

このアジャイルなアプローチは、Wingerdenが関わっているSRIの主要プロジェクトのいくつかに、重要な推進力と焦点をもたらしています。

量子経済開発コンソーシアム(Quantum Economic Development Consortium:QED-C)量子コンピュータの関係者をエコシステムとしてまとめるプラットフォーム

国立研修教育資源 (National Training and Education Resource:NTER)貧困地域の住居を耐気候構造にしてエネルギー効率を高められるよう、建築技術などに関する教育コンテンツを作成

Desert Owlほぼ全天候の条件下で、計測・信号情報(MASINT)および画像情報(IMINT)任務を遂行する空挺情報・監視・偵察システム

広汎性学習システム(Pervasive Learning System:PERLS):大人の独学を支援するよう設計されたパーソナルアシスタント型の学習アプリ

避妊薬および不妊治療のターゲットデータベース(Contraceptive Infertility Target Database:CITDBase):ヒト向けの避妊薬のターゲットリストを現場の研究者に提供する健康データベース

野村SRIイノベーション・センター(Nomura-SRI Innovation Center : NSIC): NSICは日本企業とシリコンバレーの先駆的なスタートアップ企業や研究開発ラボをつなぐ役割を担っています。また、技術のトレンド、新興ビジネスモデルや新興財務モデル、イノベーションのベストプラクティス、市場参入戦略、技術移転のフレームワークなどに関する体験的な教育も提供しています。

おわりに

Wingerdenは、世界レベルのプロジェクトチームを組織し、世界レベルのソリューションを提供してきました。「励まし合いながら答えを導き出す場を育む」ことが好きであると述べています。そして彼は最後に、プロジェクトから最高の成果を導き出すには、エンジニアリングチームにとってオールラウンドなスキルがいかに必要かについて以下のように述べています。

「私が大いに認めていることの1つは、エンジニアリングとテクノロジーが進歩したとはいえ、エンジニアリングのプロジェクトには依然として人の力を多く必要としていることです。ですから、エンジニアリングのプロジェクトを成功させるためには、チームを管理する様々なソフトスキルが欠かせません。私は、この点を楽しんでいます。一人ではなく、チームで仕事をするのが好きなのです。そして、チームが良好なパフォーマンスをあげ、自らが取り組んでいることを楽しんでもらえれば、そのこと自体が大きな勝利であり、得られる成果は予想を超えた素晴らしいものになることでしょう。」

SRI Internationalについて、詳しくはhttps://www.sri.com/jaをご覧ください。

編集/管理:熊谷 訓果/ SRIインターナショナル日本支社

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