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アパラチア地域の教育改善にSRI Educationの研究を活用

SRIが運営する「REL Appalachia」は、学校や学区と提携して家庭や教師が生徒を支援するために必要なリソースや知識を得られるようにしている

しっかりとした教育を受けられるようにすれば、算数や読み書きなどの基礎技能や、批判的思考力、問題解決力、困難な状況に直面したときの回復力(レジリエンス)など、より複雑な能力を向上させることが可能になり、児童生徒の人生を成功に導くことができます。

SRIインターナショナルの教育部門(Education Division)が運営するラボであるアパラチア地域教育研究所(Regional Education Laboratory Appalachia:REL Appalachia)では、研究者と技術支援を担当する業者がケンタッキー州、テネシー州、バージニア州、ウェストバージニア州の教育改善に関するエビデンスに基づいた支援を提供しており、児童生徒が学校生活や人生で成功するために必要な教育資源やサービスの提供を支えています。

このラボは、学校や学区、州機関、教育関連NPOと直接提携しており、この地域が最も差し迫った課題に対応できるよう、重要なリソースを提供するという支援を実施しています。REL Appalachiaの専門家たちは、ケンタッキー州地方部のK-12(年長から12年生)までの教育関係者やバージニア州のコミュニティカレッジの指導者たちと協力して、児童生徒や教職員が安全かつ協力的な学習環境を確保できるよう、トラウマに配慮した実践手段の開発および実施の支援を提供しています。

テネシー州では、識字教育プログラムの効果を検証する教育関係者の取り組みを後押しており、高校卒業後の進路(付加教育や研修、就職、軍隊など)に向けた準備段階における強化を支援しています。バージニア州では、早期学習者に向けた算数・数学の指導実践を強化するための専門能力開発ツールキットを開発しており、ウェストバージニア州ではREL Appalachiaが地元の教育関係者たちと協力して、学校や地域のパートナーに対し、算数・数学の専門的な指導と学習の改善に取り組んでいます。

また、学校の枠を超えて、祖父母や近親者の養育を支援する教育関係者や、子どもの算数学習に家族全員を参加させる「コミュニティ夜間算数・数学教室のツールキット」の地域における実践を支援するなどの提携関係も築いています。

SRIのCenter for Education Research兼REL AppalachiaのディレクターであるVictoria Schaeferは、「私たちが注力しているのは、学校と学区が研究の裏付けがある実践方法を見出し、それを教室で実際に採用した上で児童生徒の学びの改善を支援することです。地域社会が児童生徒一人ひとりの多様なニーズに応えられるよう、私たちは研究や技術支援、そして普及に関するリソースを一元的にまとめています。これにより新しい情報が生まれ、各人の業務で活用・応用できるようになっています。政策立案者やプログラムリーダー、教育関係者がより良い教育を実践できるよう支援し、情報を他の人々と共有できるようにしているのです。」と述べています。

SRI Educationの専門家は50年以上にわたり、極めて重要な内容を扱う研究や評価プロジェクトを牽引し、SRI Educationのリーダーたちは教育システムのあらゆるレベルにおいて改善にまつわる活動を行ってきました。この専門家たちは現場の教育者たちとともに働きつつ、実践の場における差し迫った課題に取り組んでおり、また、プロジェクト全体にわたって教育の公平性が確実に組み込まれるように支援を提供できる知識と経験を有しています。

「私たちのスタッフは、その地域とそこに住む人々を知っているとともに、差し迫った課題に対するエビデンスに裏打ちされた解決策も認識しています。そして、SRIとそのパートナーがともに、教育、学習、そして生活をより良くすべく、パートナーとつながるための最善のアプローチを熟知しています。」とSchaeferは述べています。

データからパターンを見つける

REL Appalachiaは2020年に、代数1(Algebra 1)を9年生(中学3年生)ではなく、ミドルスクール(小学6年生~中学2年生)で修了することを奨励する州全体の政策が、意図したとおりに機能しているかどうかを州や地方の指導者が理解できるように調査を実施しました。この政策は学校の成果向上と、大学進学や就職に対してより的確に準備を整えられるようにすることを意図するものでしたが、学区では、生徒一人ひとりを成功に導くための正しい方法であるかどうかの確信がありませんでした。そこで、REL Appalachiaの研究者たちは地元の学区と協力して、これまでのデータを年単位で調査して成果を検証し、パターンを探し出したのです。

その結果、代数1を早期に履修しても、必ずしも高校でよりレベルの高い数学コースを履修することの後押しになるわけではないことが判明しました。また、早期評価で高得点を取っても、経済的に不利な状況にある生徒や英語力強化のサービスを受けている生徒は、数学の上級コースを勧められた割合が少ないことも判明しました。

SRIの上級教育研究員(Senior Education researcher)で、REL Appalachiaの普及責任者であるLaura Kassnerは、「公平性というテーマが浮上してきたのです。このコースには、どのような生徒が、どのような時に入ってきたり、退出していったりしているのでしょうか?このことは、学校のカウンセリングサービスにとってどのような意味があるのでしょうか?保護者教育にはどのような意味があるのでしょうか?公平な数学教育とはどのようなものなのでしょうか?」と疑問を呈しています。

これらの学区の数学の指導者たちは数年をかけて、REL Appalachiaの研究者と協力の元インフォグラフィックやセミナーを介してこの成果を共有し、専門能力の開発指針として活用しました。REL Appalachiaは公式な協力関係が終了した後も、学校が独自にデータを収集・検討して、実践が全生徒にとって有効であることを確認するためのツールを提供し続けました。

「私たちのパートナーが実践上の課題を抱えて私たちのところに来たとき、私たちはそのパートナーが能力を向上させられるように、私たちの能力を提供します。教育関係者や政策立案者、プログラムリーダーが自らのプログラムや実践を今後も強化していけるように必要なツールを残すこと、それが私たちにとって、最良の仕事です。」

REL Appalachiaは、60年近く続く地域教育研究所プログラムに属する10の研究所のひとつであり、州や地域の学校に対する連邦政府の研究投資としては最大規模のものとなっています。これらのラボの研究はすべて 教育科学研究所(Institute of Education Sciences)から資金提供を受けており、州や地域のパートナーに無料で提供されています。REL Appalachiaの研究者たちは、常に地域のパートナーと協力してエビデンスに基づく解決策を収集、作成、実践しています。研究者たちは児童生徒と教師を支援するとともに、近い将来の教育成果を向上させるために必要なことを研究し、それを実践することに力を注いでいます。

「子どもの教育にかかわれるチャンスは一度しかないことから、正しくかかわっていきたいと思うのです。私たちは、ただ試してみて、何がうまくいくかを見ていこうという考え方には賛同しません。子どもたちをこのように扱いたくはありません。そうではなく、裏付けとなるエビデンスを基に子どもたち一人ひとりにとって最良のことを与えるという考え方をしています。これは、この仕事に携わる私たち全員にとって信じられないほどモチベーションを高めてくれることなのです。」

本記事はSRIが執筆したものであり、連邦政府やRELプログラムの見解を必ずしも代表するものではありません。

編集/管理:熊谷 訓果/ SRIインターナショナル日本支社

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