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SRIの科学者がグライコミクスのプロトコルを科学界に公開

SRIのTumor Glycomics Lab(腫瘍グライコミクスラボ)に所属するDenong Wang、微生物やがんの糖鎖シグネチャーを探索する戦略を語る

すべての生命体には、たんぱく質が独自のプロファイルでつながったグライコーム(または、糖鎖やグリカン)があります。グライコミクスは個々のグライコームの研究であり、病気の診断やがんの検出、精密免疫療法に関する新しい戦略の開発につながる可能性を秘めています。

SRI Biosciencesの腫瘍グライコミクスラボ(Tumor Glycomics Lab)のシニア・プログラム・ディレクターであるDenong Wangとそのチームは、微生物やがんの糖鎖シグネチャーを同定することを目的として糖鎖の多様性を専門に研究しています。

Wangが最近Springer社のMethods in Molecular Biology誌に発表した論文では、免疫学的に強力な糖鎖(しばしば免疫反応を引き起こす細胞の糖鎖シグネチャー)を検出するプロトコルを紹介し、治療薬の有望な標的を同定する戦略についてWangとそのチームが論じています。今回のブログでは、Wang博士のこの論文について詳しい話を聞いてきました。

この論文の目的は何ですか?それが科学界にとってなぜ重要なのですか?

我々は、科学者が使用する「糖鎖シグネチャー」を同定できる実用的なアッセイプロトコルを提供したいと思っています。このプロトコルは免疫学的に重要な意味を持ち、かつ臨床の場では役に立つもの、例えばがん細胞や病原体の糖鎖シグネチャーを同定できるものにしたいと思っているのです。

すべての細胞の外側は糖鎖で装飾されています。我々の免疫システムは、このような糖鎖シグネチャーを認識するように訓練されており、病原体やがん細胞に対しては、それらに反応して防御する特異的な抗体を生成します。つまり、これらの糖鎖シグネチャーを判別できるプロトコルは、病気の診断や新しい生物医学的治療法の開発にとって非常に有益なものなのです。

これらのプロトコルをサイエンスの世界と共有すれば、科学者のネットワークが広がり、様々な分野で免疫学的に効果が高い標的の特徴を明らかにすることができます。その結果として、研究の対象となっている疾患やがんに罹患している人々の健康と福祉に貢献することができるのです。

微生物や腫瘍を効果的に同定するために、これらのプロトコルは現行のテクノロジーとどのように併用すればよいのでしょうか?

我々は糖鎖ターゲットを探求すべく、現行の複数のアッセイプラットフォームを統合しました。例えば、糖鎖マイクロアレイやグリカンアレイを用いると、病原体や腫瘍に特有の標的をスクリーニングすることができます。その後に、グリカン特異的酵素免疫測定法(ELISA法)やフローサイトメトリー法、光ファイバーアレイ走査技術(FAST-scan)などの他の分析法を用いて、特定の糖鎖シグネチャーの病原体または腫瘍の発現を検証します。

この戦略は免疫学的に重要な糖鎖を同定するのに有効であることが証明されています。そして、この戦略を採用した我々の研究は、炭疽菌の芽胞SARSコロナウイルス、あるいは循環腫瘍細胞の免疫原性糖シグネチャーの識別へとつながりました。

グライコミクス研究の発展におけるSRIの役割とは何でしょう?

我々は長らく、微生物やがんの糖鎖シグネチャーを同定する研究に関心を寄せていました。長年にわたり、我々のチームや他の研究者たちは、これらの糖鎖を研究する新しいツールの開発に献身的に努力しています。その中には、糖鎖マイクロアレイやグリカンアレイに関するプラットフォームが複数ありますが、これらは生物医学的に利用できる糖鎖シグネチャーを探索する有力な手段となり得ます。

糖鎖マイクロアレイのプラットフォームプロトコルでは、糖鎖の標的を探索するにあたり、補完的に採用できる様々なプラットフォームの主要な特徴について解説しました。我々は困難な課題、たとえばパンデミックへの備えを強化できるような広範な抗ウイルス剤の開発や、精密免疫療法を進展させられるような腫瘍糖鎖マーカーの探索などに取り組むべく、SRIで糖鎖研究を推進させていきたいと考えています。

写真:Denong Wang博士。SRIのTumor Glycomics Lab(腫瘍グライコミクスラボ)にて

編集/管理:熊谷 訓果/ SRIインターナショナル日本支社

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