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EdTechの影響力―今後のより良い活用法

「EdTech ~Education + Technology~」の最大の目標は、ユーザー獲得と満足度の向上ではありません。EdTechの満たすべき基準は、”教える側”と”学ぶ側”を効果的にサポートするために「機能」して、その裏付けとなる信用できる研究が存在し、証拠となるデータが存在することです。SRIインターナショナルの学習科学・評価の専門家たちは数十年に渡りこのようなデータを提示し、洞察を行ってきました。しかし、デミング哲学を学んだ工程技師なら即座に指摘するように、品質・影響検査を工程の最終段階でしか実施しないことは、高コストの「スクラップ」を抱えるというリスクを意味します。(ここでの「スクラップ」とは、開発者、教師、生徒の浪費した時間と、生徒たちの潜在能力を最大限に伸ばす機会を逸するということです。)

そのリスクを軽減し、EdTechのイノベーション開発コストを抑えるため、私たちは人々がどのように学習するかについて洞察し、理解を深めなければなりません。学習科学の専門家たちは、総括的評価に関する研究を行うだけではなく、EdTech開発のライフサイクルのあらゆる段階で手助けをすることができます。

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概念化―イノベーションを生み出す洞察

「学習」は複雑ですが、クリエイティブデザイン思考を使うことで、教育における解決手法を数百とはいかなくとも数十は生み出すことができます。よくある落とし穴は、テクノロジーにのみ焦点を置いてしまい、教える側・学ぶ側にとっての効果や成果に注意を払わないことです。この数十年間の多くの失敗はこのアプローチのため生じたものでした。

学習科学・技術導入の専門家たちを含む多分野が関係するバランスのよいチームならば、イノベーションプロセスの初期段階において、技術開発と導入を強化する方法に重要な洞察をもたらすでしょう。それは、開発チームがブレインストーミングから時間と資金の使い道に優先順位を付けるまでのタイミングにおいて、極めて重要です。

初期のデザインおよびプロトタイピング―デザインに関する重要な決定は初期段階で行う

デザインチームはSRIの学習科学の専門家たちの力を借りて、自信とスピード感をもって開発を繰り返すことで、初期段階から学習者のフィードバックを高い頻度で得ることが可能になります。これは単に「早く失敗する」ことではありません。学習効果を数値化して計測する方法を学ぶことで、デザインチームはプロジェクトのコストが高騰する以前に、どんなタイプの学習に関するフィードバックが最も重要なのかを知ることができます。学習成果において成功を数値化する方法を知ることは、あらゆるビジネス指標と密接に関連しており、投資レベルが低い開発ライフサイクルの早期段階で、教える側と学ぶ側に影響を及ぼすイノベーションの方向性を決定づけます。

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実用最小限の製品(Minimum viable product:MVP)―バージョン1.0に達したタイミングを知る

「MVP」による部分的立ち上げは合理的です、しかしEdTechのイノベーションにおいて、何が最小限で実用可能となるのでしょうか。EdTechの試作版を運用し、それを教師と生徒がどう利用するか、どう学習を助け或いは妨げるかについて、基本情報を収集することが不可欠です。予備データがないまま開発・導入を継続するか否かを決定することは、キール(竜骨)と舵のないヨットに乗るようなものです。経験豊富な学習科学・導入チームには、「MVP」の試作版が実際の場面で成功するよう確実に導くツールが存在します。

早期の製品化―新たなデータの出現が次のステップへの情報となる

新たなイノベーションが立ち上がるときにそれを早く長く成功させるには、新たなデータが重要です。広範囲に受け入れられるかは初期段階で決まるため、予備的な定量・定性データの収集(可能であればリアルタイムで)が必要不可欠です。学習科学チームは、信頼性があり、かつ説得力のある説明を行うために必要な実地データの収集・分析計画を策定することができます。

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反復および規模拡張のための評価―導入の成功に役立つデータと教訓を集める

教育・研修関係の顧客の目はますます厳しくなっています。仮説上の成果には出資できないため、彼らは「これが役立つかはどうすれば分かるか?」と単刀直入に尋ねます。新たなデータは役に立ちますが、厳密な評価《テクノロジー、ユーザー、提供方法、そして教える側・学ぶ側がどのように影響を受けるかについて調査を行い評価すること》を実施することで、十分な説明が可能となります。ユーザーに意見を求めることも有効ですが、さらに重要なのは、実際にユーザーが導入前と比べてより早くより深くより多く学ぶことができたか、そしてそれができた要因は何かを明らかにすることです。

学習科学がスマートなEdTechを生み出す

学習を理解し測定することが、学習科学の専門家の主たる役割です。信頼できる学習の専門家と協力することで、EdTech開発者は資金と時間を削減できるとともに、EdTechのイノベーションを加速させ、生徒たちは恩恵を受けることができます。
SRI Educationによる具体的な事例については、「学習能力向上とR.O.I.の改善(Enhancing Learning and Improving Your R.O.I.)」をご参照ください。

筆者:Jim Vanides (Senior Education & Industry Consultant) & Phil Vahey/ SRI Education

編集/管理:熊谷 訓果/ SRIインターナショナル日本支社

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