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機械学習の「一歩先」へ進み、製造業務を最適化

「DASL」で既存データを用いてエラーを予測し、コストとダウンタイムを削減

機械学習(Machine learning)は、膨大な量のデータによって推論を立てます。しかし、機械学習のアルゴリズムに必要なデータ量を単純には入手できない場合があります。SRI Internationalは、適応的なセマンティック推論を用いてデータギャップを埋める、ディープアダプティブセマンティックロジック(DASL:Deep Adaptive Semantic Logic)というシステムを開発しました。DASLは、イノベーティブな機械学習と知識により導かれた推論が共生的に結びついた環境下で、ボトムアップのデータ駆動型モデリングと、トップダウンの理論的推論を統合します。システムが専門家とデータを一致団結させ、より適切で豊富な情報に基づいた意思決定を促すのです。

「DASL」の何が特に優れているか

ディープアダプティブセマンティックロジック(DASL)は機械学習の一歩先へ進み、製造業を最適化します。人間の知識と限られた事例データを活用して重大で稀な現象を検出し、発見した内容をオペレーターやメンテナンス担当者が理解できる方法で伝えます。その後、オペレーターはこれらのインテリジェントステートメントを活用し、製造のシステムとプロセスの維持・改善をする際に、より適切な意思決定を行うことができます。

DASLはなぜこれほどユニークなのでしょうか。DASLは、構造化され入念に精選されたデータのみに基づいて推論する標準的な機械学習システムとは異なり、非構造化された現実世界のデータから学習する次世代型インテリジェントシステムです。このデータを人間の知識と組み合わせてコンテキストモデルを構築し、モデルから推論して意思決定を説明します。SRIのシニアコンピュータサイエンティストであるAndrew Silberfarbは、DASLとは「標準的な深層学習(Deep learning)や機械学習(Machine learning)などの統計的学習と、人間が理解可能なルールに基づく従来型のエキスパートシステムが交差するところにあります」と述べています。

DASLが「タスク」に集中する方法

DASLはヒューリスティック(経験則的)なルールを用いてトレーニングされ、その後にDASLシステムに集められます。次に、低レベルのニューラルネットワークを構築・トレーニングすることでギャップを埋めます。例をあげると、DASLに飛行機の構造を認識させるようにトレーニングすることが可能です。トレーニングでは通常、翼や胴体などを認識するためのDASL学習を行い、ヒューリスティックルールを通じてこれらの個別の検出内容を組み合わせます。トレーニングオプションは多彩で、幾何学的手がかり、論理的帰結、直接の注釈、遠隔監視などを任意に組み合わせることができます。1つのコンテキストで学習した情報を共有し、ルール内の構造を活用してパフォーマンス全体を向上できるため、DASLのデータニーズは最小限で焦点が絞られたものになります。

DASLは製造のパイプライン内の諸問題を特定し、メンテナンスの必要性を予測するのにとても適しています。DASLが生成した関連性の高い理解可能な洞察を活用して、製造プロセスの中断などの重大な混乱を防ぐことができます。DASLが予測されたパフォーマンスと情報ステータスをエキスパート担当者に送信すれば、ユーザーは最も重要な問題に時間を割り振って集中することができ、様々な中断を回避できます。DASLは、たとえば「次の理由により、約30分後に…システムで障害が発生することが予測されます…」のように、人間に理解可能なアウトプットを作成するように設計されています。このアウトプットは、アラート、テキストレポート、または構造化されたレポートの形にできます。DASLは技術者やエンジニアと協力して問題をすばやく特定し、最も効率的な対応をコーディネートします。結果として、稼働時間を増やしながら、メンテナンス時間とリソースを大幅に節約することが可能です。

単なる機械学習ではなく、DASLを使用すべき理由

純粋な機械学習(ML)モデルには、以下のように一定の制限があります。

• 基礎となるアルゴリズムのトレーニングに大量のデータを必要とする一方、多くの場合重大な事象は稀であり、生成されるデータ量は限定的

• 業務上の問題の微妙な差異に常に適しているわけではなく、ガイドや理解が不可能な「ブラックボックス」手法である

• 条件の変化に応じてMLモデルを更新するにはMLのエキスパートが必要だが、そのような人員を確保できない場合がある

DASLは、MLに必要なデータ量が簡単に入手できないという状況にも対応できるよう、明確に設計されています。こうした場合、人間の知識と事例データを組み合わせて意思決定を行い、人間が理解可能なレポートとアラートを生成します。DASLはデータ要件が低く、理解力は高いため、他のMLシステムよりも幅広いアプリケーションが可能です。また、実績がある既存のメンテナンスプロセスと方法を活かして、現在の製造の慣行を置き換えるのではなく、強化するような方法で機械学習を追加できます。機械学習とルールベースのシステムを一歩進化させ、両方の長所を統合したのがDASLなのです。

場合によっては、生じる可能性のあるすべての障害モードでビッグデータを利用できるわけではありません。それでもなお、製造業には条件とプロセスを最適化するためのインテリジェントな相互作用が必要です。DASLは、複数の企業、組立ライン、分野にわたって知識を活用する能力を提供します。大規模なデータセットの必要性が低下すれば、データが希少な場合でも、DASLで平均パフォーマンスを大幅に向上させられるようになります。競争の激しい製造業の世界において、大幅なコスト削減を実現し、リソース配分の計画を改善することが可能なのです。

DASL技術について、さらに詳しくはこちらをご覧ください。
原文は、https://automationalley.comに掲載されています。

著者:Andrew Silberfarb、Sr. Computer Scientist, Artificial Intelligence Laboratory at SRI International

編集/管理:熊谷 訓果/ SRIインターナショナル日本支社

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