SRIの75年間のイノベーションについて: ロボット外科医(テレプレゼンスによる遠隔操作システムとその方法)  〜世界初、遠隔地での手術を可能にする商用ロボット手術システム〜
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SRIの75年間のイノベーションについて: ロボット外科医(テレプレゼンスによる遠隔操作システムとその方法)  〜世界初、遠隔地での手術を可能にする商用ロボット手術システム〜

「75年間のイノベーション」シリーズでは、SRIが設立された1946年から現在に至るまでの数々の画期的なイノベーションを取り上げます。SRIの英語ブログでは、2021年11月の75周年を迎える日まで、毎週1つずつイノベーションに関する記事をリリースしています。この日本語ブログでは、その中からいくつかを日本語にてご紹介します。

まるでブドウの皮をむくように簡単に…ロボットが手術室に登場

今から7000年前ほど前、頭蓋骨に大きな穴を開けられた気の毒な人がいました。新石器時代の頭蓋骨を発掘すると、その5~10%に脳外科手術の跡がみられるといいます。

幸いなことに、現代では手術は大きく進歩しました。現代の麻酔は、メスでの切開から「痛み」を取り除いてくれました。しかし外科手術は、その手技に最も適した道具を、熟練の外科医が使うことで成り立つ技術です。

1995年、SRIインターナショナルはIntuitive Surgical, Inc.(インテュイティブサージカルインク)というスピンオフ企業を設立しました。同社は、SRIから「daVinci® Surgical System(ダビンチ®サージカルシステム)」として知られるようになったロボット手術システムと、その技術に関するライセンスを取得しました。2010年には、ダビンチシステムが実際にブドウの皮をむく動画が公開されています。非常に繊細なロボットの動作は、このようにパフォーマンスされました。

外科医がロボットアームを介してメスを振るうには

腹腔鏡手術は別名「キーホール・サージェリー(鍵穴手術)」と呼ばれ、患者の術後のケアという点で革命的であり、1980年代には現代の外科手術の技法となりました。そしてロボット技術や自動化技術が進歩するにつれ、手術室や腹腔鏡手術を「SFの世界」に誘うような、新たな動きが「外科の世界」で始まったのです。

1980年代、SRIインターナショナルのフィリップ・S・グリーン(Phillip S. Green)は低侵襲手術の実現を目指した実験を始めました。グリーンは生物医学を専門としたエンジニアであり、SRIが開発した別の画期的な分野である超音波研究チームの一員でした。このような新しい分野は、SRIの複数分野の技術を1つのシステムに統合して開発されていますが、これにより外科手術のレベルを一段階上のレベルに引き上げ、患者のより良い治療に貢献できるであろうと考えたのです。

グリーンは、外科医と同等かそれ以上の精度を持つ機器を介して、外科医が遠隔操作で手術をできるようにしたいという夢を持っていました。当初のアイデアは、実際にアクセスできない場所でも技術の高い外科医が遠隔手術をできるようにするというものでした。

初期の試作機は、ステレオイメージディスプレイと小型カメラに加え、手術器具を搭載したロボットアームを操作するためのロボットシステムと遠隔操作システムで構成されていました。米国国防総省の資金援助とSRIインターナショナルの支援を受けて、この試作機は商用化に至っています。SRIは、このダビンチを開発した研究室から世界中の手術室という舞台に送り出すべく、1995年にIntuitive Inc.というスピンオフ企業を設立しました。

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レオナルドも誇りに思うであろう「da Vinci® surgical system」

手術とは、最高の条件を揃えたとしても、怖いものです。患者が手術台に横たわる時には、外科医の手には多大なる信頼が寄せられているのです。外科医の手の代わりにロボットアームを使うには、ロボット技術が人の身体にメスを入れることに対する「信頼のテスト」に合格しなければなりません。

ロボット手術は、人間の外科医による手術の延長線上にあり、外科医のスキルを増強してくれる道具の1つなのです。グリーンの研究チームがこれを念頭に考案した試作品は、「グリーン・テレプレゼンス・システム(Green Telepresence System)」と名付けられました。

信頼性の高いこの「ロボット外科医」は大きく分けて2つの部分から成り立っていました。

1. テレプレゼンス・サージョン・ワークステーション(TSW: Telepresence Surgeon Workstation)と画像表示モニター

2. リモートサージカルユニット(RSU: Remote Surgical Unit)

TSWの前にいる外科医は、立体映像モニターと一対の器具マニピュレーターを介して、手の動きをRSUに伝えます。液晶ディスプレイのモニターの視野角は120度で、外科医は偏光メガネをかけて3Dの画像を見ながら手術をすることが可能でした。RSUには、マニピュレーターからの出力を受けて機器の先端を制御する「エンドエフェクター」が搭載されており、この先端には鉗子やニードルドライバー、腸管把持器、メス、焼灼器などが接続されていました。この試作機には、SRIの「触覚フィードバック技術」が追加され、さらに進化を遂げたのです。

その後、Intuitive Inc.はda Vinci® surgical system(ダビンチ)を商品化しました。現在、ダビンチは心臓手術など、複雑な手術に使用されています。腹腔鏡手術では、1〜2cmの小さい切開幅というこれまでにない繊細なレベルにまで達しました。

ダビンチには4本のロボットアームがあり、各アームには、操作、切開、焼灼、縫合を行う専用のマイクロツールが搭載されています。ロボットアームは可動式のカートに取り付けられており、手術台の横に設置します。執刀外科医は人間工学に基づいて設計した、洗練された操作コンソールを介して、3Dの拡大視野を見ながら手術を行います。ダビンチは精密に制御された微小な動きが可能であることから、ロボットアームにて手術できる範囲は人間の手による手術よりも広がりました。

Intuitive Surgical, Inc.のda Vinci® surgical systemは現在、世界で最も広く採用されている多目的ロボット手術システムです。

da Vinci® surgical systemは、腹腔鏡手術用として世界で初めて米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けたロボット支援手術システムです。

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ロボット手術の分野をさらに広げる

SRIは、米国国防高等研究計画局(DARPA)と協力して、「トラウマポッドプロジェクトTrauma Pod Project」と呼ばれるプロジェクトを主導しました。これは、戦地で前線から何マイルも離れた場所にいる外科医が患者の手術を行うことができる、半自律型の手術ユニットを作るというものでした。このプロジェクトでは、ダビンチサージカルシステムを採用し、さらにそれを進化させて、患者だけが手術室にいればよいという環境を作りました。このソリューションでは以下のことが可能になったのです。

• 患者の3Dスキャンとバイタルサインの取得
• シミュレーションしたCT画像を見て怪我を診察
• 腸切開のシミュレーションを実施
• 患者の鼠径部にシャントを設置
• 手技の包括的な記録の作成

このシステムのテストでは、外科医が重要な手技を100%の精度で行えるということを実証しました。

SRIは現在、一般向けにバーチャルリアリティ(VR)ヘッドセットとコントローラーを使用したロボット外科医を開発しています。「Taurus」と名付けられたこのシステムは、宇宙空間で使用される可能性のある「新世代のロボット外科医」となるかもしれません。

Intuitive Surgical, Inc.のda Vinci® surgical systemは、毎年何万件もの手術に使用されています。SRIインターナショナルの他の多くの研究開発の成果と同様に、da Vinci® surgical systemは熟考、アイデア、技術、そして豊富な専門知識が融合したものです。ロボット手術は、外科医と患者の双方に対し、大きな影響を及ぼしたり命を脅かしたりする可能性のある状態から、より良い転帰を得られるよう支援していきます。

SRI Internationalについて、詳しくはhttps://www.sri.com/jaをご覧ください。

参考資料:

Reddy RM, Gorrepati ML, Oh DS, Mehendale S, Reed MF. Robotic-Assisted Versus Thoracoscopic Lobectomy Outcomes From High-Volume Thoracic Surgeons. Ann Thorac Surg. 2018;106(3):902–908. doi:10.1016/j.athoracsur.2018.03.048

Da Vinci Surgical System peeling a grape: https://www.youtube.com/watch?v=KNHgeykDXFw

Intuitive da Vinci Surgery: https://www.davincisurgery.com/

George EI, Brand TC, LaPorta A, Marescaux J, Satava RM. Origins of Robotic Surgery: From Skepticism to Standard of Care. JSLS. 2018;22(4):e2018.00039. doi:10.4293/JSLS.2018.00039

SRIの75年間のイノベーションについて(Ultrasound 超音波技術によって内部から生じる画像) : https://dish-japan.sri.com/n/n83c7771d453b

YouTube, How da Vinci surgery works: https://www.youtube.com/watch?v=QksAVT0YMEo

編集/管理:熊谷 訓果/ SRIインターナショナル日本支社


SRIの使命は、世界を変え、人々の暮らしをより安全かつ健康的、そしてより生産的なソリュ ーションを提供することです。