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未来のナレッジマネジメントテクノロジーの構築に取り組むSRIの研究者

組織のデータの保存や管理の方法を変革することを目的とした取り組みに、DARPA(米国国防高等研究計画局)との契約にて1,080万米ドル資金提供を獲得

ナレッジマネジメントは、大規模な組織にとって大きな課題となっています。よくあるのが、規則や規定類から各種文書や政策方針に至るまで、データが構造化されておらず、索引もなく、複数の時代遅れのシステムに分散したままになっていることです。このような中であげられるのが、適切な情報を見つけ出し、適切な人に適切なタイミングで届けられるようなナレッジマネジメントツールはないのかという重要な問題です。

独立非営利研究機関であるSRIインターナショナルの研究者たちは、Adaptive Task Help Emerging from Natural Annotations(ATHENA、自然なアノテーションから生成される適応的なタスクのヘルプ)として知られるプロジェクトでこの課題に取り組んでいます。

米国国防高等研究計画局(DARPA)が資金提供するKMASS(Knowledge Management at Scale and Speed、規模とスピードに応じたナレッジマネジメント)プログラムATHENAは、未来のナレッジマネジメントツールの開発支援を目的としています。この1,080万ドルの資金提供を得た研究プロジェクトの期間は3年間で、従業員がその役目を成功裏に果たすために必要な情報を見つけ出し、周知できるようにするのと同時に、情報の遮断を最小限に抑えられるような革新的な方法を開発します。

SRIのArtificial Intelligence Center(人工知能センター)のラボディレクターであるKaren Myersは、「長年にわたって組織や従業員が苦心して蓄積してきた経験的な知識(ナレッジ)というものがあります。このような情報を毎回探し出すのではなく、組織内で積極的に共有できる方法があれば素晴らしいと思いませんか?」と述べています。

ナレッジマネジメントに関する課題を解決する

KMASSとATHENAは、文書化された知識の文脈と、情報を必要とする特定のユーザーを見出せる技術の創造を目指しており、標準的なワークフローの一部として文書化された知識を効率的に適用したり、新しい知識を習得したりするシステムの開発や評価、実証に取り組んでいます。

SRIが主導するATHENAプロジェクトは、人工知能(AI)のテクノロジーを活用して、組織が情報を取得したり、管理したりする方法、分野の垣根や知識のギャップを超えたコラボレーション、文脈を考慮したうえで知識を効率的に周知させる方法を強化することに特に重点を置いています。

「SRIは、人間が何をしているのか、そしてどのような情報が人間にとって最も価値があるのかを理解しようとしており、そのために、機械学習のテクノロジーを活用しています。ユーザーの行動を長期にわたって観察すれば、モデルの構築を始められるようになり、対象となる人たちの経験からだけではなく、同じような人々が経験した類似した状況からも学ぶことができます。」とMyersは述べています。

このプロジェクトには、SRIのArtificial Intelligence Center、Speech Technology and Research Laboratory、Center for Vision Technologiesが参加しています。これらのラボでは、マルチモーダル情報(テキストや音声、映像など)を取得してユーザーの行動をモデル化し、文脈に含まれる情報を解明して、その時のニーズに特化した、タスクが明らかな知識を普及できるようなテクノロジーの研究に共同で取り組んでいます。

SRIはATHENAの開発にあたり、大規模な文書リポジトリからテキスト情報を見つけ出す専門知識とテクノロジーを供与してくれるi2k Connectと、経験ベースの知識の収集と普及に関する方法論とユーザーインターフェースを設計するPacific Science & Engineering Groupの民間企業2社と提携を結んでいます。

ユーザーにとっては、どのような情報が最も価値があるのかを理解することが大きな課題となっています。ATHENAはユーザーの行動を長期にわたって観察することから、ユーザーの過程や好み得手不得手を学習し、同じような経験をしている人と比較することができます。例えば、作業員が次に新しい作業を覚える時に、他の人が得た経験から得られる役立つ情報の詰まった通知を受け取ることができればなどは、どうでしょうか。

この課題の別な側面として、ナレッジマネジメントシステムが成功するには、知識の獲得が不可欠です。例えば、特定のタスクにはどのソフトウェアをいかに設定するのが最適なのか、初めての出来事にどの社内規定が適用されるのかなど、他の従業員が今後同様の課題に直面したときに役立つような知見を、迅速かつ自然に文書化できるメカニズムが必要です。そして、特に難しいことが、ユーザーがその知見を記録するためにタスクを一旦中断するのではなく、問題解決の「流れの中で」その知見を記録できるようにすることなのです。

知識を組織全体に効率よく周知させることは、多くの利益をもたらすとともに、さまざまな用途があります。実践的なナレッジマネジメントは、経験豊富な人材がもたらす影響を高めることから新入社員の迅速な即戦力化に至るまで、新しい従業員を迎えるたびにそれぞれの組織を再構築していくのではなく、これまで培ってきたことの上に組織を築いていけるよう、支援します。事実、ATHENAのようなプロジェクトは、AIテクノロジーがいかに組織のデータ管理手法や従業員のコラボレーションを促進できるのかを示しつつ、未来の職場を定義する支援を提供できる、とMyersは述べています。

この研究は、米陸軍研究局(ARO)および米国防高等研究計画局(DARPA)の支援を受けています。情報の内容は必ずしも政府の立場や方針を反映するものではなく、公式な承認を暗に示すものでもありません。

編集/管理:熊谷 訓果/ SRIインターナショナル日本支社

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