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不確実性とグローバルな変動の時代に対応する SRIのイノベーション 〜日本の新しい可能性〜

SRIインターナショナルについて

SRIインターナショナルについては聞いたことがないかもしれませんが、コンピューターのマウスを使ったり、ネットサーフィンをしたり、もしくはApple社のiOSのSiriやGPSナビゲーションは使ったことはあると思います。これらを体験したことがある人は、SRIが原点であるイノベーションに触れているのです。

SRIインターナショナルは、世界に影響を与えた多くの画期的な技術ソリューションの発明や設計を背後から支えています。世界初のコンピュータマウス、世界初のインターネットのプロトタイプであるARPANET、世界初の手術用ロボットであるDavinci、世界初のバーチャルパーソナルアシスタントであるSiri、世界初の自律走行オートバイであるMOTOBOT、世界初の自動化学医薬品発見システムであるSynFini、世界初のリアルタイム拡張現実(AR)技術、世界初となる医療への超音波の応用、世界初のオンラインバンキング用ソリューションなど、世界を変える多数の技術革新に関わっており、人々の安全と健康、そして生産性を今まで以上に発展することに寄与しています。

米国シリコンバレーの中心部に本社を置くSRIインターナショナル(旧Stanford Research Institute)はミッションを掲げた75年の歴史を持つ非営利の独立技術研究開発機関であり、顧客と共に最先端技術を実用化し、ラボから市場へと送り出すことを支援しています。

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SRIのビジネスモデル

SRIのビジネスモデルは非営利の組織であることから、アイデアの創出からエンドユーザーまでお客様を支援するという独自性のあるモデルとなっています。SRIは重要な課題を解決できる発明を生み出し、その発明が人々やコミュニティに確実に届いて恩恵をもたらすよう、これを応用して実用化して市場へと送り出しています。SRIは委託研究開発のプロジェクト、商業化にかかわる業務、ソリューションの事業化によって収益を得ており、この収益はSRIの能力や施設、スタッフに再投資することで自社の使命・ミッションを推進するとともに顧客やパートナーのニーズに応え続けています。SRIは技術のライセンシングやベンチャー企業のスピンオフ、新製品の為のソリューションによって、イノベーションを市場にもたらしています。

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SRIが注力するテクノロジーの領域

SRIは政府機関や産業界の企業と協力し、技術的・科学的分野での幅広いコラボレーションを通じて、真の技術革新を生み出し、顧客に高い価値を提供することを目指しています。SRIが注力している主なテクノロジーを以下にご紹介します。

• 人工知能(AI)と機械学習(ML):SRIの人工知能センター(Artificial Intelligence Center:AIC)は自律的に、あるいは人間と協力して学習・知覚し、世界と対話するインテリジェンスシステムの構築に向けて、高度なメソッドを開発しています。

• コンピュータビジョン:SRIのCenter for Vision Technologies(CVT)はマシンが見て理解し、記憶できるようなコンピュータビジョンについて、最前線の開発を手掛けています。SRIのエンドツーエンドの映像や処理技術によって、ロボットや自動車、人間が装着するタイプのシステムなど、現実世界の応用事例にてコンピュータビジョンが機能しています。

• ロボティクス、センサー、デバイス:SRIのロボティクスラボは最先端のロボット工学を推進しており、感知して考え、行動できるスマートシステムの構築に取り組んでいます。SRIの研究開発チームによって、新しい自律機能や革新的なコンポーネントの開発や世界初のプロトタイプの作成にかかる時間が短縮されています。

• 音声と自然言語: SRIのSpeech Technology and Research(STAR)ラボは音声技術を手掛ける世界有数の組織として認識されています。STARの音声・言語に関するテクノロジーはコンピューターのアプリとの対話をより自然なものにするだけでなく、私たちの意図や健康、感情の状態に関する実用的な情報を豊富に提供しています。

• バイオメディカルサイエンスとバイオメディカルのR&Dサービス:SRIのバイオサイエンス部門であるSRI Biosciencesは医療に対するアンメットニーズ(充足されていないニーズ)の解消に向けて、次世代の医薬品や診断薬、デバイスなどを提供しています。

• アドバンスト・イメージング・システム(最先端画像システム):SRIのIntegrated Systems and Solutions Groupは地上や宇宙空間における最も過酷な条件でも耐えうる高度なイメージングソリューションと複合イメージャーの設計・開発を手掛けています。

• サイバーメソッドとフォーマル・メソッド: SRIのComputer Science Laboratory(CSL)は、人々の生活のすべてに影響が及ぶ重要なコンピュータシステムの構築・評価・防御を担っています。

• 教育と学習: SRIの教育部門は質の高い研究を実施しており、データとエビデンスの活用を支援するとともに教育現場や教育政策、生徒の学習をより良いものにするためのツールを開発しています。

• クオンタム(量子): SRIは応用量子科学の世界的なリーダーであり、イノベーターとして台頭しています。米国の量子経済開発コンソーシアム(Quantum Economic Development Consortium:QED-C)はSRIインターナショナルがその運営を手掛けています。

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SRIのイノベーションに対するアプローチ

「発明・Invention」は「イノベーション・Innovation」ではないということを最初に明記しておきます。「発明」とは天才的なアイデアであったり、優れた科学論文であったり、確固たる特許であったりするかもしれません。だが、残念なことにあまりにも多くの発明が市場化までに至らず、市場の人々に価値を提供する「イノベーション」になり得ていないのが現状です。SRIは発明をイノベーションに変えることができますが、それは対象となる顧客にとって重要かつ深刻な問題を解決するとともに、ニーズを満たしつつ、各状況に応じた高い価値を伴うソリューションを顧客に提供できた時のみです。対象となる顧客は(市場内の)社外である場合もあれば、社内(自組織内の他チームやマネジメント)の場合もあります。

ニーズや課題は千差万別です。その多くは技術的な観点から見ると「興味深い」課題ですが、そのすべてが「重要な」課題として認められるわけではありません。「興味深い課題」と「重要な課題」の違いは、「興味深い課題」に対する解決策は「あってもかまわない」が、「重要な課題」は解決策が「必須である」ということです。市場においては、「重要である」課題に焦点をあて、誰かが「必須である」とする解決策を導いて初めてイノベーションが達成されるのです。

SRIでは技術的な話や技術開発に深く踏み込んでいく前に、いくつかの戦略的な質問に対する回答を顧客と共に考え、評価するようにしています。この目的は、SRIの顧客やその顧客自身の顧客に対する真の価値を見出し、それを提供することです。質問の中には、「どのような重要課題を解決しようとしているのか」「なぜ特定の課題を解決する必要があるのか」「この課題を解決することで、誰が利益を得るのか」「一定状況下における外部顧客、もしくは内部顧客は誰か」「特定の課題を解決した場合に与える顧客への影響はどの程度なのか」などがあります。また、最初は顧客から何か特定のテクノロジーを開発「したい」と声をかけられることもよくあります。その開発「したい」という思いから真の「ニーズ」を抽出し、特定する時にもこれらの質問は役立っています。SRIではこの「なぜ(Why?)」「なぜそれをしたいのか」という一連の問いを繰り返すというシンプルなことを実践しているのです。

SRIではこの段階を「ディスカバリー・フェーズ」と呼んでおり、顧客の重要な「ニーズ」を的確かつ明確に定義することを目標としています。「良好に定義できた課題は、半分解決できたも同然だ」とも言われているくらいなのです。

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顧客の重要課題を明確に定義し、顧客のニーズを十分に判別した後には、SRIの研究者チームと顧客のチームが同席する「アイディエーションワークショップ(Ideation Workshop)」を開催します。このワークショップでは双方の集合知とSRIのイノベーションに関する手法を活用し、特定した課題を解決できる革新的なソリューションのコンセプトを共同で作り上げます。実のところ、MOTOBOTのようなSRIの著名なテクノロジー・ソリューションのコンセプトは、このようなアイディエーションワークショップ(Ideation Workshop)から生まれたものなのです。

ソリューションのコンセプトを形成して顧客の承認を得た後は、技術ソリューションの開発を実際に進めていき、設計したコンセプトに基づくコンセプトの証明(Proof of Concept:POC)を顧客に提出します。POCはコンセプトの実現可能性(フィージビリティ)を検証・実証し、その実用可能性を証明することを目的としています。この段階では顧客企業のエンジニアをSRIのラボに常駐させ、SRIの科学者とともに作業を行うこともあります。その後はSRIのラボが顧客のプロトタイプ開発を支援し、SRIの技術ソリューションに基づいた製品(プロダクト)を顧客が開発できるように技術を移転させます。

SRIが日本のイノベーターに力を与える

SRIは、1963年に日本にオフィスを構えました。当時の目的は、野村総合研究所(NRI)の設立を支援することでした。SRIの日本オフィスは、米国外におけるSRIの唯一の拠点であり、この約60年にわたり、SRIはさまざまな分野や産業において日本を支援し、商業界や学術界、政府機関で日本のイノベーターを支援してきました。

近年、自動車産業や建設業、重工業、化粧品など各業界の重要なニーズに応える新たな技術ソリューションの開発において、日本の大手企業がSRI日本支社に大いに注目しています。

野村SRIイノベーション・センター(NSIC)

SRIは日本のイノベーターに先進的な技術ソリューションを提供するだけでなく、野村證券株式会社と提携してシリコンバレーに野村SRIイノベーション・センター(NSIC)を設立しました。NSICの拠点はカリフォルニア州メンロパークのSRIのメインキャンパス内にあり、日本企業のみを対象にしてサービスを提供しています。

NSICはすでにその運営を開始しており、現在はさまざまな業種の大手日本企業を受け入れています。NSICのプログラムはメンバー企業が新技術を判別し、評価できるようにするための最良慣行(ベストプラクティス)を習得・育成できるように設計されており、次世代イノベーションの採用を促進するとともに、テクノロジーへの投資価値を最適化することを目的としています。

NSICでは2022年の新規メンバー企業募集を検討しています。メンバーの日本企業がシリコンバレーで開催されるNSICのプログラムに現地参加できるようになる可能性もありますが、リモートで参加できるようにもしており、メンバー企業の日本にある組織もオンラインにて参加できるように整えています。

日本の課題と可能性

新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、日本や世界に多くの新しい課題を突き付けました。また、地域的・世界的な競争の激化に加え、高齢化や労働力の減少、イノベーションの実践の衰退、インフラの老朽化など日本が近年直面している多くの課題も浮き彫りにしています。

しかし、日本が何度も不況から迅速に回復したことを歴史は示しています。また、日本は常に新しい発明を取り入れ、それを適応させ、重要なニーズに応える価値あるイノベーションに発展させることに長けていたことも、歴史が証明しています。例えば、5世紀に起源を元とする日本の文字の発展から、近代戦後の自動車生産、造船、半導体産業、TQM(Total Quality Management:総合的な品質管理)プロセスなど、幅広い例を数多く上げることができるのです。

このように、日本は現在、上記にあげたような課題に直面していますが、まさに今は世界のその他地域のイノベーションに関する成功事例を学んで採用し、これをさらに発展させることによって、現在日本が抱えるイノベーションの課題に対応できる時でもあるのです。

幸いなことに、技術や研究開発における最新の進歩やトレンドを礎にして、スマートかつカスタマイズした革新的なソリューションを採用すれば、これらの課題の大半には対応可能です。さらに言えば、技術革新をうまく適用できれば、日本が抱える課題をさらなる経済成長につなげる新たなチャンスに変換することができるのかもしれません。

「未来」を考える

今、世界はこれまでとは比べられないほど繋がっています。また、現在の世界のバランスは、かつてないほど速い変化を遂げています。イノベーションのエコシステム、グローバル市場、地域市場、競争の性質(今や地域横断的だけでなく産業横断的にも)、そしてモダン・イノベーションの世界的な台頭も同様に言えます。しかし、このような前例のない不確実な変化の時代は、企業や国にとって新たなチャンスをふんだんに与える時でもあります。だがその反面、それはイノベーションの課題を正しく、かつ的確に捉え、成功させることができれば、に限ります。

SRI Internationalについて、詳しくはhttps://www.sri.com/jaをご覧ください。

筆者:Youssef Iguider, VP of Business Development & Japan Country Director, SRI International, Japan(イギデル ユセフ, SRIインターナショナル 日本代表 兼 ビジネス デベロップメント担当バイスプレジデント)

編集/管理:熊谷 訓果/ SRIインターナショナル日本支社

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