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SRIの75年間のイノベーションについて:Centibots ハイブマインド(集合精神)を持つロボット

「75年間のイノベーション」シリーズでは、SRIが設立された1946年から現在に至るまでの数々の画期的なイノベーションを取り上げます。SRIの英語ブログでは、2021年11月の75周年を迎える日まで、毎週1つずつイノベーションに関する記事をリリースしています。この日本語ブログでは、その中からいくつかを日本語にてご紹介します。

「人間は“不可能”という言葉をあまりに頻繁に使いすぎる」――これは米国のSFテレビドラマ『スタートレック (Star Trek)』に登場する機械生命体ボーグ (Borg) のハイブマインド (集合精神) に属する「セブン・オブ・ナイン (Seven of Nine)」の言葉です。

人類とロボットは常に新しい関係性を築き、この関係性のアップデートはイノベーションによって模索されています。SRIインターナショナルが設立された当初のイノベーションの1つに、「シェーキー (Shakey)」という名のロボットの開発が挙げられます。シェーキーは、人工知能 (AI) を使って自走をし、部屋から部屋へ移動をした最初のロボットです。

シェーキーはまた、後にSRIが生んだ協働ロボット「Centibots」の先祖にあたります。

Centibotsは、その祖先のロボットが誕生した頃よりもロボット技術が成熟した世界で誕生しました。その世界では、特定の課題を処理するためにロボットの手助けが求められていました。そこでCentibotsは、群れを成すロボット、すなわちロボットの集団が1つの協働ロボット (cobot) として機能するように設計されました。

それでは、Centibotsが発明された経緯をご紹介しましょう。

ロボットが協働する時代:Centibotsはいかにして”群れ”を形成するようになったのか

ロボットというと、米映画に登場する「ロビー・ザ・ロボット(Robbie the Robot)」のように独立した単体ロボットを思い浮かべる人が多いでしょう。外見は人間の姿に似ていて、人間が日々行っているような仕事をするように作られたロボットのことです。しかし、ロボットの「人間に代わって業務を遂行するためのシステム」という本質的な意味に着目すれば、ロボットの集合体が全体で協働するというアイデアには新たな可能性があります。例えば蜂のような社会性のある昆虫の場合、大きな集団が協力して「巣」という最適な繁殖環境を守っています。ロボットの群れが、共通の目的のために互いに協力して同じような行動を取るということもあり得るでしょう。

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Centibotsは、独立した単体ロボットの100体以上の集合体です。Centibotsを作った最初の目的は、都市部などで建物の監視業務に従事させることでした。Centibotsはその任務を遂行するにあたり、2つの協働チームに分かれ、互いに協力をして区域の状況を調査しました。Centibotsの第1チーム(「Pioneers」というマッピングロボット)は選択された区域を調査し、分散マップを作成して共有しました。第2チーム(「Amigobots」という追跡ロボット)は地図が作られた区域内で特定の物体を探すように設定されており、侵入者などの望ましくない対象を検知し追跡しました。得られたデータは、指令センターグループのメンバーやチームに共有されるように設定されており、全体としてロボットによる監視ネットワークが完成したのです。

Centibotsのような「群ロボット」の主なイノベーションとして、1体のロボットが失敗しても、人を介することなくすぐに他のロボットが代わりを務めるということが挙げられます。このように、Centibotsは自律的でありながら互いに繋がっているのです。

SRIインターナショナルのCentibotsプロジェクトは、米国防高等研究計画局(DARPA)の資金提供によって進められました。

Centibotsは群れとしてどのように機能したのか

Centibotsは分散型ロボットシステムの実験の初期段階で生まれましたが、SRIはこの領域の先端技術を発展させることを目指していました。分散型ロボットは、個別に存在しながら互いに繋がっています。Centibotsは、分散型ロボットの集合体を形成するために、技術のエコシステムを利用しています。このエコシステムは独立したロボット単体で使用すると費用効率が良い単純な設計の技術を持ち寄って構築されており、まさにこれは「全体が部分の総和に勝る」の実例といえるでしょう。

●Pioneers(第1チーム)はレーザー・レンジファインダー(測距器)を備えており、障害物の検知とデータの生成を行って一定区域の地図を作成しました。

●Amigobots(第2チーム)はカメラ部分に超音波センサーを搭載しており、第1チームが作成した地図に記されていない物体を検知しました。

●アドホックネットワークにより、ロボット同士の通信が可能でした。

●データはその後、司令センター経由で共有されました。

マッピングや追跡など、必要な技術要素によってロボットが分かれていたことはコスト削減に寄与しました。

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Centibotsには、一定期間ロボットを宇宙空間に設置するための技術が、数多く使用されていました。その1つが「隠れマルコフモデル」の手法と類似したシステムです(前ブログにてご紹介したSRIの言語音声認識システム「DECIPHER」でも使用されました)。このシステムを使用すると、確率分布に基づいてロボットの位置を判定することが可能です。ロボットが移動するとデータが更新されると同時に、各ロボットの位置はチーム内の隣のロボットと連動しています。

また、Centibotsプロジェクトはロボット同士の協力関係に加えて、人とロボットの相互作用についての調査も目的としていました。

群ロボットを救助隊に!

独立したロボットとしてのCentibotsは、単純かつ費用効率が高くなるように設計されていました。しかし、実際にロボットが集合すると、非常に優れた能力を発揮しました。互いに通信しあって意思決定を行うことができ、そのうえ人とのやり取りがほとんど必要ないロボットは、危険で困難な状況や場所での使用が可能です。例えば、Centibotsプロジェクトは本来は軍事的な状況での群ロボットの使用を追求することを目的としていました。Centibotsの設計において「自律的な意思決定を可能にする」とは、人による意思決定が伝達されない様々な状況や非常に危険な多くの場所で利用可能であることを意味していました。この定義は様々な商業利用に加えて、宇宙探査ミッションも想定されうるものでした。

分散型ロボットシステムの進歩(その一端をSRIのロボット工学チームが担いました)に伴い、群ロボットは今では農業や超小型無人飛行機(Micro Air Vehicles:MAVs)などの分野で商業利用されるようになりました。

Centibots、あなたの先祖であるシェーキーも、あなたの誕生をきっと誇らしく思っていることでしょう。

SRIで発信する様々な情報は、こちら(https://www.sri.com/ja)でご覧いただけます。

出典
「来た、見た、AIを一新した:ロボット“シェーキー”が果たした役割」https://medium.com/dish/75-years-of-innovation-shakey-the-robot-385af2311ec8
SRI Centibotsプロジェクト:http://www.ai.sri.com/centibots/
Centibotsの機能について説明する映像(2016年):https://www.youtube.com/watch?v=lsEBkLG2too&t=3776s
Centibotsのマッピング例(ワシントン大学の調査):https://www.cs.washington.edu/research/rse-lab/projects/centibots
「SRIのDECIPHERシステム」マイケル・コーエン(Michael Cohen)ほか著、SRIインターナショナル・スピーチリサーチプログラム(Speech Research Program),1989年2月:https://www.researchgate.net/publication/234810357
農業における群ロボットの利用:https://www.agri-tech-e.co.uk/swarm-robotics-offer-precision-agriculture-at-plant-level/

編集/管理:熊谷 訓果/ SRIインターナショナル日本支社

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