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SRIの量子技術開発(Quantum technology)について:量子センシングと量子通信

「量子力学」とは、自然の物理的特性を原子スケールで説明する物理学の基本理論です。

そして「量子力学」は、科学者や技術者にとって想像力を巡らせるのにはつきないテーマです。しかし、量子力学は世界にとっては新しいことではありません。この研究分野の理論は、19世紀から20世紀へと変わる頃に形づくられました。この理論には、ニールス・ボーア、マックス・プランク、アルベルト・アインシュタインなど著名な研究者が携わりました。古典物理学の枠にとらわれずに、限りなく小さい世界を説明しようとするのが量子力学です。

2020年代に入った現在は、技術開発に適用される量子力学の法則がエンジニアリングとコンピューティングの道をリードしています。量子工学は技術のパラダイムであり、量子端末やセンサーのパフォーマンスと精度は、従来の同等製品の実行できるレベルをはるかに超えるものです。
SRIは、量子センサーの開発、そしてエンジニアリング分野をリードする企業として頭角を現しつつあります。

量子工学の時代へ

SRIの応用物理ラボ(Applied Physics Laboratory)のディレクターであるJesse Wodinは、「あらゆる防衛関連の企業が、多くの民間企業やDARPAと共に、量子工学のプロジェクトに資金とリソースを費やしています」と指摘します。

そして、量子工学のファジーな性質を利用して実現・強化されているテーマとして、同氏は以下のテーマを紹介しています。

量子センサー:量子センサーは、原子をセンサーとして利用します。加速度、光、RFエネルギーなど、現実世界の力が量子センサーの原子に影響を与えます。原子に対するこれらの力の影響を測定する方法が特定されているため、掛かる力を驚くほど正確に測定できます。そのため、より遠くが見えるカメラ、より小さな信号を捉えるラジオ、驚異的に正確なナビゲーションシステム、より正確に時を刻む時計の開発が可能となります。たとえば自動運転車では、カメラやレーダー等を備えた画像センサーなど、さまざまな種類のセンサーでエコシステムを構築し、これらのセンサーを使用して車の運転をサポートします。量子工学技術は、センサーを構築するために使用され、実生活で使われるさまざまなセンサーの感度を向上させます。

量子時計: 忠実に時を刻む時計は、現代世界が円滑に機能するためには欠かせません。米国海軍天文台のマスタークロック(USNO:US Naval Observatory Master Clock)は、インターネットのバックボーンの時計を構成する原子時計の複合体の一部です。セルネットワークとGPSシステムもUSNOマスタークロックに基づいています。実際のところ、通信システム、宇宙システム、発電所、ほぼすべての産業用制御システムは、最終的にこのマスタークロックが示す時間に準じています。現代のシステムは正確な時刻に依存しているので、これらの時計や時計に由来する時間調整システムの障害は壊滅的な影響を及ぼすことになります。

量子力学により、原子の電子状態の振動に基づく時計をつくることが可能です。Wodin氏は、「量子時計」についてSRIに次のように語りました。「私たちは原子の小さな振動に基づいて時間を測定します。これらの原子時計の普及が進めば、敵対する相手に対して依然脆弱なままのGPSへの依存度を下げることができるでしょう。」

量子通信:量子通信は量子情報科学の新たな応用分野であり、SRIは積極的に取り組みを進めています。調査・開発を行っているのは、長距離における量子情報の転送を可能にする、未来の量子ネットワークのためのハードウェアコンポーネントです。これは、暗号化、量子コンピューティング、分散センシングに適用されます。

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SRI Internationalの量子エコシステム

SRIは現在、自己資金および政府資金を併用し、量子センシングと量子通信の分野で研究開発を行っています。量子システム工学の時代が到来したと言えますが、製品を商品化の段階に持ち込むには、多分野から成るチームが必要です。Wodin氏は、次のように例えています。「ある会社が建物を建設する時には、構造エンジニアや大工、トラック運転手など様々な人員を活用します。そして、建設作業には各専門のプランナーたちも必要です。使いやすく魅力的な建物を建てるには、エンジニアリングと技術の専門家に加えて、建物の専門知識を持つ人材が協力しなくてはなりません。量子工学も同じです。プロジェクトのメンバーが原子物理学者だけなら、素晴らしいアイデアを持っていたとしても、商業環境にうまく転換できないかもしれません。」

Wodin氏は、さらに続けます。「今すぐにでも、商業利用に向けた量子プロジェクトを推進するためには、他の専門分野の人材(光工学、電気工学、システムエンジニアリング、機械工学の研究者)がチームに参加して、幅広い知識を有するチームを作ることが必要です。開発の性質によっては、化学者や生物学者などが必要になる場合もあるでしょう。つまり、量子プロジェクトの実現には、技術的・商業的スキルのエコシステムが必要なのです。」

SRIは、自社と米国政府が資金拠出する多数のプログラムにより、20年以上にわたって量子関連のエンジニアリングに取り組んでおり、現代の技術開発におけるエコシステムとしての性質を十分認識しています。SRIのユニークな能力の1つは、世界トップクラスの専門家で構成される、広大で分散したネットワークを社内で活用できることです。たとえば、光工学が小さなパッケージに統合されたチップ上に量子センサーを構築するにあたり、光工学に詳しい同僚に連絡をして知識を得ることができるのです。

SRIが実現するクオンタム(量子力学的/飛躍的)な夢 〜Quantum dreams〜

SRI Internationalは、量子力学の現象を利用して技術革新を推進する多くの分野で取り組みを進めています。現在、量子磁場センサー(Quantum Magnetic Field Sensor)の開発に向けたDARPA AMBIIENTプログラムの第2フェーズに入りました。SRIの大変優秀な研究者たちは、センサーをチップサイズまで縮小するために活用できる「evanescent field optical trap」という技術の開発にも取り組んでいます。

SRIは引き続き、「量子工学」をエキサイティングな新しい分野として重視していきます。

編集/管理:熊谷 訓果/ SRIインターナショナル日本支社

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