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SRIの75年間のイノベーションについて: 大気汚染/オゾン層破壊 〜汚染が地球に及ぼす影響とその対策の理解を深める試験やプロセス〜

「75年間のイノベーション」シリーズでは、SRIが設立された1946年から現在に至るまでの数々の画期的なイノベーションを取り上げます。SRIの英語ブログでは、2021年11月の75周年を迎える日まで、毎週1つずつイノベーションに関する記事をリリースしています。この日本語ブログでは、その中からいくつかを日本語にてご紹介します。

人類による地球の汚染をキレイにする:SRIによる大気汚染削減への取り組み

SRIは、大気汚染が健康に与える影響の研究を1940年代から続けています。そして、この研究をもとに、汚染を軽減して地球を綺麗にする新しい方法を開発しています。ここでは、人類が作り出した「大気汚染」との戦いを支援するSRIの活動の歴史をご紹介します。

環境汚染と戦うSRIインターナショナル:その研究内容について

SRIは、環境汚染物質が人の健康に及ぼす影響について、数十年にわたり研究してきました。1947年には「スモッグ」が人の健康に与える影響の調査を開始しています。当時、スモッグはロサンゼルスやロンドンなどの都市で命を失う原因となっていました。例えば、1952年に発生した「ロンドンの大スモッグ」では12,000人以上が亡くなったと推定されています。SRIをはじめとする研究者の成果は、SRIの研究者が編集した1956年発行の「大気汚染ハンドブック」にて公開されました。そして、この本は現在でも使われています。

1970年代から1980年代にかけて、SRIは肺気腫やCOPD (慢性閉塞性肺疾患)など呼吸器疾患の発症メカニズムをモデル化する一連の研究を行い、このような疾患が産業界や自動車等の排気ガス、タバコの煙に含まれる一般的な大気汚染物質によって引き起こされるとのエビデンスを提示しました。この研究結果は、工業関連の排気中の窒素酸化物やオゾン含有量の許容値設定や、室内空気質の基準設定など、国内外の取り組みの基礎となりました。

SRIは1980年、米国環境保護庁(EPA: Environmental Protection Agency)と共同で、複数の調査研究をまとめた報告書を作成しました。その報告書の「Human Exposure to Atmospheric Concentrations of Selected Chemicals(大気中の特定の高濃度化学物質に対するヒト暴露):SRIインターナショナル」は、4種類の汚染物質が人間の呼吸に及ぼす影響を調べたもので、公害対策を考える上で欠かせないデータとなっています。

1980年代に入ると、オゾン層破壊が深刻な問題となりました。地上や衛星からの測定結果により、南極上空のオゾン層が薄くなっていることが明らかになったのです。SRIは、人間や植物を有害な紫外線から守るために不可欠な「成層圏オゾン」の破壊を、特定のクロロフルオロカーボン(フロン-CFCs: Chlorofluorocarbons)がどのように助長しているかを示す重要な研究に貢献しました。当時、米国海洋大気庁(NOAA: National Oceanic & Atmospheric Administration)は、気候ガスと粒子の不均一な反応がオゾン層破壊に関与していると考えていました。NOAAのこの仮説を検証する研究チームには、SRIインターナショナルの博士研究員であったMargaret Tolbertがメンバーとして加わっていました。研究チームは、氷上での「不均一反応」によって、不活性の塩素がより活性の高い形態に変換される証拠を提示したのです。さらに、成層圏に存在する人為的な塩素がクロロフルオロカーボン(フロン)に由来していること、そして、このフロンが極地の成層圏の雲の中で反応して活性塩素を放出し、オゾンを破壊していることを明らかにしました。この成果は、1987年に米国科学振興協会(AAAS:American Association for the Advancement of Science)から発表された「Reaction of Chlorine Nitrate with Hydrogen Chloride and Water at Antarctic Stratospheric Temperatures(南極成層圏温度における硝酸塩素と塩化水素および水との反応)」という画期的な論文にまとめられました。

二酸化炭素を回収してクリーンな未来を

「研究」はイノベーションの基礎です。SRIの研究は多くの場合、研究を次の段階の「開発」に進めており、そうすることで地球の未来をよりグリーンかつクリーンなものにする重要なプロセスや技術を生み出しています。その一つが、二酸化炭素回収のためのMixed Salt Process(MSP)です。

MSPは2050年の温暖化防止・温室効果ガス排出ゼロの目標を達成するために不可欠な技術です。SRIインターナショナルのプレジデントのマニッシュ・コタリ(Manish Kothari)は、MSPについて「弊社のプロセス(MSP)は、製造時のカーボンフットプリントが少なく、エネルギー消費を抑えて効率を高めるというメリットがあります」と述べています。MSPはカリウム塩とアンモニア塩の溶液を組み合わせ、石炭火力発電所から排出されるCO2を回収するとともに、エネルギー消費を抑え、効率を高めるのです。

SRIが人類による環境汚染をキレイにする

SRIは地球の浄化に役立つ技術やプロセスの開発に深く関わってきました。また、害を及ぼす可能性のある化学物質が地球環境で生成・変化する際の性質を試験する一般的な方法やプロトコルを拡張して、EPAの規制に大きく貢献してきました。

SRIが開発した試験方法は、加水分解、光化学反応、土壌反応や土壌吸着への収着、空気中に拡散させる蒸気圧モデルと揮発モデルなどを採用しています。このような試験方法は、1982年から現在に至るまでEPA試験で実施されています。

SRIは汚染物質に対する理解を深め、大気汚染の管理を支援するソリューション開発に取り組んでいます。1949年、SRIインターナショナルはカリフォルニア州パサデナでこの分野のイベントとしては初となる、First National Air Pollution Symposium(第1回全米大気汚染シンポジウム)を開催しました。これらの会議では1955年大気汚染防止法(Air Pollution Control Act of 1955)をはじめ、汚染や気候変動に関する重要な研究や気候変動に関する初期の法律が数多く制定されました。

地球にいる私たちは、この地球の新鮮な空気を吸うことができなければなりません。よりクリーンな環境を追求するSRIの研究開発は、クリーンな原材料、グリーンテクノロジー、再生可能エネルギーやエネルギー貯蔵プロセスの各分野で引き続き行われています。

※論文やシンポジウムの日本語タイトルがないため、正式名称としてではなくタイトルの意味を和訳しております。

SRI Internationalについて、詳しくはhttps://www.sri.com/jaをご覧ください。

参考資料:

Nasa, The effects of climate change: https://climate.nasa.gov/effects

World Health Organization (WHO): https://www.who.int/news-room/q-a-detail/chronic-respiratory-diseases-asthma

SRI International, report into “Human Exposure to Atmospheric Concentrations of Selected Chemicals,” 1980

Proceedings of the First National Air Pollution Symposium, 1949. Leslie Silverman papers, H MS c069. Countway Library of Medicine, Center for the History of Medicine. https://id.lib.harvard.edu/ead/c/med00396c00170/catalog Accessed May 24, 2021

Air Pollution Handbook-Edited by Paul L. Magill; Francis R. Holden; and Charles Ackley. New York: McGraw-Hill Book Company (330 West 42nd St.), 1956.

AAAS, Reaction of Chlorine Nitrate with Hydrogen Chloride and Water at Antarctic Stratospheric Temperatures

BY MARGARET A. TOLBERT, MICHEL J. ROSSI, RIPUDAMAN MALHOTRA, DAVID M. GOLDEN SCIENCE 27 NOV 1987: 1258–1260

編集/管理:熊谷 訓果/ SRIインターナショナル日本支社

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