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「免疫」が皆さんの救助に向かっています 〜SRIの科学者は人間の持つ免疫システムを制御・活用し、アレルギーを防ぎ、病気と戦う方法を探求しています〜

4年前(2016年)、私はペルーの病院のホールを不安な気持ちでうろうろと歩き回りながら、食物アレルギーが原因で深刻な状態に陥った13歳の息子について、医師からの容態説明を待っていました。この時、息子がこの状態に至った制御不能な免疫反応の経緯と、身体が正常に戻るためには何が必要なのかについて、かつて学んだ免疫学を思い出しながら頭の中で巡らせていました。

幸いにも、息子は一命をとりとめることができました。しかし、親たちの必死の思いにもかかわらず、悲劇に終わってしまうことも多いのです。

私は長い間、本当に大きな影響を与える「何か」を創造するためには、影響を与えたい事に対して深い情熱を注ぐ必要があると考えてきました。そして、実際に私が情熱を注ぐきっかけとなったのが、この2016年のアマゾン川での息子の食物アレルギーでした。私には免疫学を学んだバックグラウンドがありますが、それに加えて、幸いにも国の研究機関であるSRI Internationalに研究室を構えていました。SRIでは、インフルエンザから単純ヘルペスウイルスに至るまで、常にさまざまなプロジェクトでウイルス学の研究ワクチン研究を重点的に行っています。私は、人々の生活の向上や人命救助にも実際に影響を与える研究活動を追求する上で、研究者に大きな裁量を与えてくれる組織で働けることにとても感謝しています。

あの衝撃的なペルー旅行以来、私のチームは危険な食物アレルギーに対応する取り組みを驚異的に前進させるべく、SRIが持つ膨大なリソースと実験インフラを活用しています。私たちは現在、食物アレルギーの治療法に革命的な変化をもたらす可能性があると考えられる、暴露前療法(pre-exposure therapy)の研究を積極的に進めています。免疫反応を抑制して発症前に保護することを目標としており、初期段階の研究結果は非常に有望です。

SRIの能力は、重度の食物アレルギーへの対応のみならず免疫学ワクチン開発に関しては極めて進んでいます。そして、私はResearch Scientistとして、ウイルス学ワクチン設計に関する知識と経験を多くの重要なプログラムに展開しています。これには、現在直面している最大級の世界的な健康の危機である「新型コロナウイルス」も含まれます。

郵便物も拭かないといけない?

私が特に関心を寄せているのは、新型コロナウイルスの感染について理解を深めるために立ち上げた広範な研究プログラムです。その中でも、ウイルスの粒子が付着した物体に触れることで、どれほど容易にウイルス感染をしてしまうかという点に注目しています。感染性病原体を新しい宿主に移すことができる無生物の物体を「媒介物」と言います。新型コロナウイルスから身を守るために食品やドアノブ、郵便物などを拭くということは、媒介物を通じた「感染」と戦っているということです。

「はしか」などの呼吸器系ウイルスは、長年にわたって媒介物による感染との関連性を指摘されているため、新型コロナウイルスが広がる方法を理解する上でこの点に注目すべきなのは明らかです。初期の研究では特定の表面上でウイルス粒子がどれだけ長く生き残れるかについて大まかなガイドラインが示されていましたが、私のチームはさらにこれを掘り下げ、さまざまな物体、質感、表面のタイプをモデル化しました。目指したのは、媒介物が「感染性のもの」となるためにどれだけのウイルスが媒介物に存在しなければならないか、ウイルスは無生物物体上でどれほど長く生存できるかという点について、より正確に判断することです。この情報は、病院の手すりから郵便物や食品まで、あらゆるものに対して適切な消毒手順を構築するために欠かせません。

現在、結果の正確性と信頼性を担保するため、これらの実験を繰り返す段階にあり、2021年初頭に研究結果を発表したいと考えています。

新型コロナウイルス感染症の治療法

SRIのチームは、「媒介物による感染」だけでなく新型コロナウイルス感染症新たな治療法ワクチンに寄与する研究に深く関わってきました。新型コロナウイルスのさまざまな抗体試験を実施し、各々がウイルスをどの程度上手く特定・攻撃できるか判断しています。特に効果的なものは、新たなモノクローナル抗体治療の有望な候補となる可能性があります。

私たちはまた、新型コロナウイルスの抗ウイルス小分子療法を開発している機関とも緊密に連携しています。SRI Internationalには、新型コロナウイルスなどの危険な病原体を安全に研究できるBSL-3ABSL-3に指定された先進的な研究施設があります。通常の研究機関はこのようなバイオセーフティーレベルを取得していないため、SRIは米国内において新型コロナウイルスに必要な研究の専属パートナーの役割を担えると選定された組織グループの一つです。SARSMERSなど他の強力なコロナウイルスを扱ったこれまでの経験により、私たちは迅速にスピードを上げ、免疫学、モデリング、製剤に関する専門知識をこの新型コロナウイルスの研究に適用することができました。現在私たちの研究は、既存医薬品の適応拡大と、新型コロナウイルスに感染した患者に有効な可能性のある新しい抗ウイルス化合物の試験に重点を置いています。

「免疫系がこのウイルスに反応して保護を働かせる方法」を理解する取り組みは、ワクチン開発をより適切なものへ導く上でも重要です。新型コロナウイルス感染症がもたらす症状とその伝播方法、免疫系が危険な過剰反応に至る方法、患者の病状の進行を明確に定義するため、私たちはさまざまな研究を行っています。

私が免疫学という分野に魅了されている理由のうち、特に大きいのは、「免疫系を理解し適切に活用することで、人々をより健康にできる可能性がある」ことです。私はSRIチームのメンバーとして、研究分野を心行くまで探求できる設備、専門知識、サポートを活用できることに深く感謝しています。

SRI Internationalについて、詳しくはhttps://www.sri.com/jaをご覧ください。

筆者:Mary Premenko-Lanier, Research Scientist, SRI International

編集/管理:熊谷 訓果/ SRIインターナショナル日本支社

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