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SRI Educationの研究者が年長から8年生までの子供の無料教育リソースを検証

K-8(年長から8年生)の子供の教育カリキュラムや専門的な学習のために、自由に利用できて適応可能な教育・学習リソースを研究者たちが検証

児童や生徒の生活体験や地域社会の知識が、教室内で発揮されることはめったにありません。これは特に、歴史的に疎外されたバックグラウンドを持つ児童生徒に当てはまります。従来の学習教材は、児童生徒の言語的・文化的遺産を必ずしも肯定してはいないことがあり、児童生徒が学習に自ら積極的に参加することを後押しするような実践を伴わないことが多いのです。

しかし、William and Flora Hewlett財団による資金提供を受けた新しい研究によると、教材や学習資料には児童生徒の文化に関係する事柄が含まれていても、教室で時事問題や社会正義の問題について批判的思考を育むには、カリキュラムの規定だけでは不十分だということが示されました。

この検証を実践するにあたり、同研究論文の著者であるSRI Educationの研究者、Carrie Parker、Daniela Saucedo、Krystal Thomasは2021年の夏から2022年の秋にかけて、オープンな教育リソース(OER: Open Educational Resources)を活用した4つのK-8(年長から8年生)プログラムを調査しました。オープンな教育リソース(OER)とは、知的財産をオープンにして、その使用、適用、再利用が自由に許可されたライセンスの教育・学習リソースを指します。

研究チームは、英語(国語としての英語)、数学、理科に絞って各プログラムの設計、実践、影響を調査しました。各プログラムのカリキュラムや専門的な学習教材の検討に加え、カリキュラムの開発者や利用者(学区の管理者、教師、児童生徒)を対象としたフォーカスグループインタビューも実施しました。

「この調査によってオープンな教育の重要な側面と、文化的側面にも寄り添った持続的な実践はさまざまな手法で各OERプログラムに取り入れられていることがわかりました。それぞれのプログラムには、思いやりのある教室文化の醸成、高水準かつ公平な基準の推進、生徒の主体性と責任感の育成など、特有の利点がありました。」 と上級主任教育研究員(Senior Principal Education Researcher)であるParkerは述べています。

しかし、K-8のOERプログラムでは、教師や児童生徒が時事問題や社会正義の問題を批判的に探求する際に使えるリソースがほとんど提供されていないことも判明しました。これは、文化に対応した持続的な実践に必要な要素です。 このような実践は、児童生徒のアイデンティティや体験を肯定して社会政治的な意識を高め、児童生徒が教室にもたらす長所や知識を活用することに重点を置いています。

K-8のOERプログラムの開発者にとって継続的な課題は、教師のカリキュラムにオープンな教育の原則についての理解、文化への対応、持続的な実践が十分組み込まれているかどうかを把握している否か、また、オープンな教育の原則が実践にいかに役立つかを教師に対してより丁寧に説明する必要がある、ということであると研究者たちは明らかにしました。

研究者たちは、カリキュラムが児童生徒の多様なニーズにどのように適応させていくべきかを理解できる教材と、専門的な学習体験、この2点が教師に必要であるとしています。 K-8のOERプログラムは、OER教材を児童生徒各自のバックグラウンドに適応させつつ、協力学習を促進するという課題に対応できる革新的なアプローチを提供していますが、定期試験などのテストによる評価制度がこのような取り組みを妨げています。

 標準化された試験に対する準備をしなければならないというプレッシャーがあることから、授業時間は試験対策に割かざるを得ず、また、教材の適応も制限されていることが、教師の協力的な学習の実践を妨げています。その結果、好奇心旺盛かつ創造的な側面に関する成長は、教室で軽んじられることになってしまうのです。

「オープンな教育と文化に対応する持続的な実践は、教育の変革を構想する枠組みを提供するものですが、試験に関する要件という制限的なトップダウンの教育システムは、有色人種の児童生徒にとって不利であり、新しい知識の創出を制限するものになっています。」とSRI Educationの元教育研究員であるSaucedoは述べています。

また、教師らから得たこととして、教育実践の変化を含め、K-8へのオープンな教育を成功させるには、カリキュラムに沿った教師の専門的な学習を継続することが必要であるということがあげられます。また、教師が児童生徒中心の学習を提供し、発見と問題解決の場を作るようにすると、児童生徒には自らの学習に対する自主性が芽生え、思いやりのある教室文化の醸成に寄与すると述べています。

この研究は、現在の社会問題に対する先生と児童生徒の考え方を広げるとともに、定期試験などのテストによる評価制度の枠を超えて実践し、教師が変革するにあたり必要となる専門学習へのアクセスを拡大できるようなモデルを、K-8を対象としたオープンな教育の開発者が検討できるような枠組みを提供しています。

調査方法や参加プログラム、詳細な調査結果については、最終報告書「4件のK-8 OERプログラムにおける開かれた教育実践と文化に対応した持続的な実践 (Open Educational Practices and Culturally Responsive and Sustaining Practices in Four K-8 OER Programs)」をご覧ください。概要3点と最終報告書は こちらに掲載しています。

編集/管理:熊谷 訓果/ SRIインターナショナル日本支社

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