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SRIの75年間のイノベーションについて:高解像度テレビ(HDTV)  〜1990年代初頭に登場した高解像度テレビは現在も視聴者を魅了し注目を集める〜

「75年間のイノベーション」シリーズでは、SRIが設立された1946年から現在に至るまでの数々の画期的なイノベーションを取り上げます。SRIの英語ブログでは、2021年11月の75周年を迎える日まで、毎週1つずつイノベーションに関する記事をリリースしています。この日本語ブログでは、その中からいくつかを日本語にてご紹介します。

まさに、眼が喜んだ:高解像度テレビ(HDTV: High-Definition Television)

高解像度テレビ (HDTV) が登場したのは1990年代初頭ですが、現在でも視聴者を魅了し、注目を集め続けています。時には、新たな開発は単なる技術発展以上の意味を持つ場合があります。HDTVはコンソーシアムから生まれた製品であり、協力をして高解像度テレビ放送の実現と画像処理における問題の解決を目指したのです。Sarnoff Laboratories(現在はSRI Internationalの一部)はこのコンソーシアムに参加し、商業利用の可能性を持つ高解像度テレビ開発に向けた最終成果に欠かせない要素をもたらしました。

HDTVが家庭のリビングに登場するまで

テレビのこれまでの歩みは長く、その道のりは最初のテレビ実験の水平解像度12本に始まります。1950年代までには525本でカラーを表現できるブラウン管式テレビが登場しました。技術の飛躍的進歩がなかなか実現しないときには、大きな飛躍を促すため、しばしば他の技術が必要になることがあります。HDTV技術の場合がそうでした。1979年には日本のテレビメーカーがプロトタイプHDTVを開発し、実験的送信に成功しています。同じ頃、Sarnoff Corporation(旧RCA、現在はSRIの一部)がHDTVの研究に着手しました。

テレビ放送の新たな進歩が現実に近づき始めると、HDTVを実験段階から「製品化」へ移行するために必要な「規格」が検討されるようになりました。1980年、SMPTE(米国映画テレビ技術者協会: Society of Motion Picture and Television Engineers)は、「1100行スキャン構造」のワイド画面形式をはじめとする、HDTVのさまざまな要素について提言を行います。高解像度による放送・映写に大きな関心が集まったことを受け、連邦通信委員会(FCC: Federal Communications Commission)は民間セクターに情報と提案を求め、これにより次世代テレビ諮問委員会が設置されています。しかし未だ、「アナログテレビ」から「デジタルテレビ」への“移行”というハードルが残っていました。1993年5月、米国のデジタルテレビとHDTV仕様をさらに発展させるべく、FCCはデジタルHDTVグランドアライアンス(Digital HDTV Grand Alliance)を結成しました。

そしてこの中から、7つの組織が参加するコンソーシアムが結成されました。この協力体制が目指したのは、競合する4つのデジタルソリューションを統合し、HDTVに対する最善のアプローチに関して協力し合うことでした。1995年3月30日、Sarnoffフィールドラボにおいて、世界初のデジタルTVとなる完全統合システムのデモの準備が整いました。

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競合している4つのデジタルシステムが「1つのHDTV」に

コンソーシアムの各メンバーは、プロトタイプのハードウェアサブコンポーネントをグランドアライアンスHDTVシステムに提供しました。参加した組織は以下のとおりです。

1. AT&T
2. General Instrument
3. MIT
4. Philips
5. Thomson
6. Zenith
7. Sarnoff Corporation
(現在はSRIの一部)

最終的なシステムを構築するため、以下の4つの重要な競合しているデジタル技術が統合されました。

• DigiCipher(General Instrument)
• Advanced Digital HDTV(SarnoffおよびPhillips)
• Digital Spectrum Compatible HDTV(ZenithおよびAT&T)
• Channel-Compatible DigiCipher (MIT)

Sarnoff LaboratoriesはPhillips Laboratoriesと協力し、Advanced Digital HDTVプロジェクトと称する共同研究に取り組みました。この研究には、このような内容が含まれていました。

• MPEGビデオおよびオーディオ圧縮
• 長方形/正方形のピクセルでインターレース方式かプログレッシブスキャン方式かを選べる柔軟なビデオフォーマット
• サービスの柔軟な組み合わせが可能な、個別のビデオ、オーディオ、データのパッケージ化
• 放送ネットワークとデータネットワークの両方に適したデータ形式
• 認識されないタイプのデータを無視する(干渉を排除する)受信機
• 電力レベルが異なる2つの個別のデータキャリア
• NTSC干渉を回避するスペクトル形状の信号(旧式のカラーテレビの米国規格)
• 毎秒2400万ビットの高い合計データレート

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Sarnoff® Bitstreams™ Suiteが受賞したSRI所有のEmmy®賞のトロフィー

ビジョンから現実へ

1995年4月、グランドアライアンスが開発したHDTVシステムがSarnoffフィールドラボで統合されました。HDTVは「From Vision to Reality(ビジョンから現実へ)」というテーマを掲げ、ラスベガスで開催されたNAB95ショーでワールドプレミアを行いました。

グランドアライアンスのHDTV統合システムの発表後、潜在的な相互運用性の問題に関して業界の他の関係者から反論が提起されました。Sarnoff LaboratoriesがAdvanced Digital HDTVの開発で行った取り組みにより、相互運用性に関する多くの問題は具体的に解決されています。これを受けて、SarnoffラボのGlenn Reitmeierは、衛星・地上波放送の送信、インターレース方式・プログレッシブ方式の変換、高速ATMデータネットワークなど、このような多くの訴えに言及し、相互運用性の問題に関する確かな反証を示しました。

グランドアライアンスATSC規格は、デジタルテレビに関する世界初の規格となりました。ストリーミングビデオを含む現代のテレビのほとんどが、この規格に基づいています。

「素晴らしいテレビ」の定義

HDTVほど消費者を取り込んだものはありません。Leichtman Research Groupの調査によると、米国家庭の4分の3以上が少なくとも1台のHDTVを所有しています。

「テレビの視聴」は世代の境界を越えて共有できる楽しみであり、私たちに共通の話題を与えてくれます。HDTVはこの私達の体験を最高に活用して、ドラマと興奮の世界へとさらに引き込んでくれるのです。

Glenn Retmeierのウェブサイトより詳細情報を参照しております。

SRI Internationalについて、詳しくはhttps://www.sri.com/jaをご覧ください。

参考資料

Leichtman Research Group: https://www.leichtmanresearch.com/author/bruce/
The Dish, 75 Years of Innovation: Liquid Crystal Displays: https://medium.com/dish/75-years-of-innovation-liquid-crystal-displays-805d5afa2d20
75 Years of Innovation: CCD Broadcast Camera (日本語ブログ): https://dish-japan.sri.com/n/nb98842ea08ad
Federal Communications Commission (FCC): https://www.fcc.gov/document/advisory-committee-advanced-television-service-implementation
First demonstration of HDTV Grand Alliance at Sarnoff Laboratories: https://vimeo.com/402202723
Glenn Reitmeier refutation of interoperability issues: https://vimeo.com/405172836
Glenn Reitmeier blog posts celebrating the 25th year anniversary of the HDTV Grand Alliance: https://www.glennreitmeier.tv/
David Sarnoff Research Center Philips Laboratories Princeton, NJ Briarcliff Manor, NY, Advanced Digital Television, Jan 20, 1992: https://6f3fbc74-3393-4223-93e0-23241dc1b893.filesusr.com/ugd/253fe6_389dee1cd73a4f5c9fa58c3b5d869829.pdf

編集/管理:熊谷 訓果/ SRIインターナショナル日本支社


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